Soh Souen

この度、LURF GALLERY(ルーフギャラリー)2Fでは、Soh Souen(ソー・ソウエン)個展「Keep Me Together」を開催いたします。

Soh Souenは、絵画・インスタレーション・パフォーマンスを通じて国内外で活動し、身体を介して生の不確かさや存在のかたちを見つめる作品を制作してきました。
本展では、Soh Souenの代表的な表現である「点描」に焦点を当て、点描の代表作〈tie〉シリーズを中心に、「点描」表現を深化・展開させた新しい作品群を紹介します。

〈tie〉シリーズでは、個人の証明写真を起点に「わたし」という「個」や「アイデンティティ」を問いかけてきました。新しい展開では、自己と他者の境界を解体する「わたしたち」についての考察を深めていきます。また、身体の自律と非自律の関係性について、身体において他者が入り込んでくる身体の開口部を点描で描いた〈身体の穴を穴だらけに描くシリーズより〉によって表現します。

鑑賞者は、Soh Souenが一貫して探究してきた「個」と「身体」の境界、そして「生」への問いかけに触れながら、静謐でありながらも緊張感を孕んだ空間へと誘われることでしょう。
展示会期は2025年9月11日(木)から10月13日(月・祝)まで。

 

展示概要

Soh Souen 個展 「Keep Me Together」

会期|2025年9月11日(木) - 10月13日(月・祝)
会場|LURF GALLERY 2F
時間|11:00 - 19:00
住所|150-0033 東京都渋谷区猿楽町28-13 Roob1
協力|HIRO OKAMOTO

オープニングレセプション
2025年9月12日(金) 18:00 - 20:00
※予約不要・入場無料
※9/11(木)、12日(金)は作家在廊予定

LURF GALLERY公式サイト|https://lurfgallery.com/
作品に関するお問い合わせ|https://lurfgallery.com/pages/contact

 

※ 作品のご購入は、9月12日(金)まではお申込み制、13日(土)より先着順にて承ります。

 


Statement

わたしたちは忘れ続けた。
絶えず、外部に侵され続けていることを。
他者を摂取することで、この身体を維持していることを。
この身体が、60兆ほどの細胞のあつまりである事を。
きれぎれな、存在。
わたしという、無数の他者のすみか。
生自体があまりに不確証であること。
個人という認識の、底抜けの、悲しみ。
それでも、わたしと名付けて生き続けていくことを。

本展では、5年以上にわたり継続して制作しているドット状の絵画シリーズを展開する。大学卒業後、初めての個展で発表した本シリーズは、絵画・パフォーマンス・インスタレーションと表現の幅を広げてきた現在においても、「わたし」や「わたしたち」の性質を往還しながら思考する、自身の制作の土台となるシリーズだ。

今この瞬間にも私の細胞は壊れ続け、生まれなおしているように、普段私たちが 「わたし」 と呼んでいる存在は流動的でか弱い。無数の他者で構成される集まりが一定に統合されている状態を「わたし」と呼び、わたしを繋ぎ止めるために、他者を求めつづける。


鑑賞者が画面から隔たり、ドットの集合体が鑑賞者の目で統合されることによって人物のイメージを生成すること。つまりこの作品の属性、および我々がいつも他者からの疎隔により呼び起こされていること。そしてイメージの根拠を探そうと近づくほどに、人物像は壊れ、絵画の恥部を目の当たりにすること。

これらの働きが自己の脆さや不確証さ、他者── 隔たり、異なる存在の必要性をささやかに提示するものであることを願う。

Soh Souen

 


ソー・ソウエン「Keep Me Together」に寄せて

里村真理(熊本市現代美術館学芸員)

 

本展では、わたしとあなたとの境界を探り続けているソー・ソウエンが、証明写真を素材として人物を点描で描く《tie》を中心に展示する。
《tie》は、パフォーマンスや映像インスタレーションなどのさまざまな表現に活動を広げるソウエンの表現の起点であり、また、意欲的に展開し続けているシリーズである。

作品は、緻密で静的な姿で人々を迎える。しかし、正面を向いた複数の顔は、亡霊のように茫漠として、容易には捕まえられない。近づけば、無数の四角い色の塊へと崩壊し、像を結ぶことを拒む。

証明写真と点描。この2点から《tie》の視座を探ってみたい。

《tie》は、証明写真を元にして描かれている。わたしたちの身近なものとしてある証明写真だが、歴史を紐解いてみると、第一次世界大戦後にパスポートへの貼付に伴って世界に広がったという。国民国家体制を整えつつあった各国が、パスポートを通して人々を国民と同定し、国家と国民を結びつけることとなった。背景には内と外を分ける国境があり、今でも内に属する人々を守り、外に対しては警戒の眼差しを向ける。

そして、作品を亡霊のような印象たらしめている点描とは、19世紀後半に光学や色彩科学による視覚認識に基づいて、新印象主義者が発明した技法から始まる。混色せずに並べられた絵の具の色の点々が、人の知覚によって混ぜあわされ、色や像を浮かび上がらせる。つまりこの技法は、他者の知覚の介入を必然とする。
《tie》において点描が示すのは、私が他者と切り離されて個としての同定を前提とした証明写真が象るシステムへのあらがいであり、他者に開かれ、わたしは変化し続けるという意思表示である。

ちなみに、アナーキストたちに共感を寄せていた新印象主義の画家たちは、点描の点が自律して並び、調和する様子を、アナーキストが掲げる「調和と均衡」の世界観と重ねていたと言われる。

ふと、国境によって外と内とに裂かれた身体であっても、亡霊となって国境をすりぬけ、わたしとあなたの身体のあわいを探り合うことができるのではないかと思い当たる。

冒頭にある、ソウエンの言葉が響く。

「私たちは忘れ続けた・・・他者を摂取することで、この身体を維持していることを。」

これからも、ソウエンが他者と出会い、「共有」と「隔たり」を往還しながら、その境界を豊かにしていくであろうことを心から期待している。

 

 

《Together》162 x 130.3 cm, Oil on cotton, 2025

 

《tie '2512》45.5 x 53 cm, Oil on cotton, 2025

 

《tie '2515》45.5 x 53 cm, Oil on cotton, 2025

 


Installation Views

展示風景 展示風景 展示風景 展示風景 展示風景 展示風景 展示風景 展示風景   


 


Profile

ソー・ソウエン | Soh Souen
 
私たちの生にまつわる事象を身体との関わり合いを通して考察する絵画、インスタレーションやパフォーマンスを国内外にて発表。コロナ禍に始まったサラ・ミリオとの共同プロジェクトや、銀座エルメスフォーラムにて内藤アガーテの作品を使用したパフォーマンスを実施するなど、独自の活動を展開している。主な展覧会に「第17回福岡アジア美術館アーティスト・イン・レジデンス成果展 境界を縁取る」福岡アジア美術館(福岡)、「絶えず壊れてきたし、壊れ続けている(壊れてはいない)」/ rin art association(群馬)、「京都精華大学55周年記念展 FATHOM − 塩田千春、金沢寿美、ソー・ソウエン」/ 京都精華大学ギャラリー Terra-S(京都)など多数。2024年、インスタレーション作品「Bellybutton and Breathing −お臍と呼吸」が福岡市美術館に収蔵された。

1995年 福岡県北九州市生まれ
2019年 京都精華大学芸術学部造形学科洋画コース卒業

 

個展
2025年
「Sometimes you hurt. Sometimes you get hurt. Yet still you keep looking for a tender relationship with the world.」/ YIRI ARTS(台北)

2024年
「いま、わたしが吸った空気は、かつてあなたが吐いた空気」 / 福岡城アートプロジェクト(福岡)
「Handle with Care」 / HIRO OKAMOTO(東京)
「Let us see what you see.」 / FOAM CONTEMPORARY(東京)

2023年 
「Your Body is the Shoreline」 / √K Contemporary(東京)
「絶えず壊れてきたし、壊れ続けている(壊れてはいない)」 / rin art association(群馬)

2022年 
「Why do I have two hands, eyes, and nipples on my both sides? どうして私の手は、目は、乳首は二つあるの?」 / GALLERY SOAP(福岡)
「Al Borde」 / Taller Sangfer(Oaxaca, Mexico)
「Let it sway, like a ripple of agitation. さざなみのように、ゆらいでみる」 / HIRO OKAMOTO(東京)

2020年
「ささやかな叫び」 / The Mass(東京)

 

グループ展
2025年
「Embodied Perspectives」 / WKM Gallery(香港)
「Beyond Reaching You, Beyond Feeling You.」 / TEZUKAYAMA GALLERY(大阪)

2024年
「Faces」 / Gallery CURU(タイ、バンコク)
「第2回福岡アートアワード」 / 福岡市美術館(福岡)

2023年
「BABEL派 vol.1」 / 大阪市立芸術創造館(大阪)
「京都精華大学55周年記念展 FATHOM − 塩田千春、金沢寿美、ソー・ソウエン」 / 京都精華大学ギャラリーTerra-S(京都)

2022年 
「第17回福岡アジア美術館アーティスト・イン・レジデンス 成果展『境界を縁取る- 石、呼吸、埋立地』 / Artist Cafe Fukuoka, 福岡アジア美術館(福岡)
「Anamorphosis」/ Fir Gallery(北京)
「(あなた以外の全てが見える)」 / 銀座蔦屋書店ATRIUM(東京)

 

パフォーマンス
2024年
「The Egg」 / 福岡国際センター(福岡)
「The Egg」 / HIRO OKAMOTO(東京)
ガビ・シリグとのコラボレーション「柔らかなものは、何かを守ることができると思う? − Do you think something soft can protect something?」/ ベルリン工芸美術館(ベルリン)

2023年
「エグササイズ」 / 京都精華大学(京都)
「The Egg」 / 福岡市美術館(福岡)
「エグササイズ」、「The Egg」 / √K Contemporary(東京)
内藤アガーテとのコラボレーション「La Langue(言語/舌)」 / 銀座メゾンエルメス フォーラム「エナメルと身体」展(東京)
「エグササイズ」 / 科学技術館エントランス(東京)

2022年
「Bellybutton and Breathing −お臍と呼吸」 / 福岡アジア美術館 あじびホール(福岡)
「エグササイズ」 / 福岡アジア美術館エントランス(福岡)

2021年
「We will sea (Performance with Sara Milio)」 / 虚屯(福岡)

 

受賞歴
2024年
「福岡アートアワード」市長賞
2022年
「Artists' Fair Kyoto 2022」優秀賞

 

パブリックコレクション
福岡市美術館「Bellybutton and Breathing ーお臍と呼吸」

 

HP|https://soh-souen.com/jp/
instagram|@sohsouen